虎の巻00:はじめに~「社員研修」というサービスの不思議

「研修」というサービスは、「良し悪し」がとても見極めにくく、これが「ダメな研修」が存在し続ける理由となってます。全く、困ったものです。

私の疑問

私は2007年に転職して、今の研修講師という職業に就きました。

それから、沢山のお客様先で、社員研修を登壇してきました。
お陰様で、良いお客様、受講者様と出会い、今まで本当に充実した講師生活を送っています。

しかし、ここ数年、ふとこんな思いに悩まされました。

「社員研修というサービスは”今のまま”でいいのだろうか?」

その思いは、ずっと頭に居座り続けました。

それまで、様々な研修会社に登録し、そこから依頼を受けて登壇してましたが、
ついに我慢ができず、「本当に良い研修」を提供するために自分で会社を立ち上げました。

正直、まだまだ顧客数は少ないのですが、
お蔭様で、お付き合いいただいているお客様からは、
良い評価をいただき、リピート依頼もゆっくりですが増えています。

これは、やはり私の疑問が間違っていないことなのではと
今は思っております。

さて、なぜ、私は「これでいいのだろうか?」と思ったのでしょうか?

一般的な商品やサービスでは普通のことが・・・

研修講師になる前、私はSE(システムエンジニア)でした。
SEとは、企業・組織で活用されるコンピュータのシステム(アプリケーション)を設計・開発する職業です。

このようにSEのサービスのメインは、コンピュータシステムの提供です。

このコンピュータシステムは、当然、事前に設定された定義
(お客様の要望と実現可能性を鑑みた結果、作成される設計書)
の通り、動作しなければならないものです。※
※問題があるシステムが皆無とはいいませんが(苦笑)、
それでも、ある程度の質を満たさなければなりません。

コンピュータシステムでは、一定の質を満たさない動作やプログラミングの誤りを「バグ」といいます。
バグは見つかれば基本、修正します。
あえなく修正できなくても、「なにがバグか」を文書などで明確化し、開発・提供側(システムを提供するベンダーやシステム会社など)とお客様(そのシステムを実際に使用するユーザー)ともに情報共有します。

よって、サービス提供前には、「満たすべきサービス(システム)の要件」を明確にし、納品前後は「システム(サービス)の品質」に対し、提供側も顧客側も様々なチェック(テスト)をします。もし品質が満たさなければ、修正しますし、修正が終わるまでは「真の納品」は完了しません。仮に納品が許されたとしても、その後修正や改良の対応が続きます。

私は、この「要件の設定」と「質のチェック」は、コンピュータシステムだけでなく、通常の製品や商品、サービスといわれるもの全てで行われているものと思っていました。

少し、難しく書きましたが、要はお客様側が、事前に何を望んでいるかを明確にして、後に望んでいたもの通りであるかというチェックを行うということです。だから「望んだものどおりだったか」サービスの内容や質を判断するのは「お客様側」であることになります。

これは普通のことですし、当たり前のことですよね。

しかし、「社員研修」というサービスは、ちょっと違いました。

「社員研修」というサービスの質は「研修会社」が決めている

「社員研修」も、事前準備と事後のフィードバックは行われます。
一見、他の商品やサービスと同じように見えます。

しかし、よく考えてみると「大きく違う」ところがあるのです。

それは「実際の提供される研修(サービス)の内容や質は、研修会社が”好き勝手に”決めることができる」
ということです。

え?って感じですよね。
「いやいや、研修の内容や良し悪しを、我々(お客様側)も判断している」という方が多いのではないでしょうか?

しかし、同時に、何か身に覚えがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

実はそう感じる担当者様から、相談されたことがあります。そこで、実施されたカリキュラムやテキスト、講義の内容を聞くと「え?それでは何もならないのでは?!」という研修が結構あるのです。

これは、ある意味「怖いこと」です。
実は「顧客側の要望」のレベルに合致していない、研修会社が「ま、これでいいだろう」というレベルの研修が実施されるということです。

なぜ、こんなことが起こるのでしょうか?

この理由をいろいろ考えると、実に様々な要因があることがわかりました。

この要因を1つ1つこの「虎の巻」でお話ししていこうと思ってます。
そうしなければいけないと思っています。

私は、「真の質の良い研修」や「正しい研修」が、ちゃん世の中に広まってほしいと思っています。
そして、「質の悪い研修」「ダメな研修」は、どんどん淘汰されていくべきだとも思っています。

ただ、「質の良い研修」「正しい研修」が多くなっていくには、我々研修会社、研修講師だけでは難しいのです。

なぜなら、「質の悪い研修」「ダメな研修」でも、「表面上、良さそう」に思え、多くの企業や組織で行われているからです。

だから、実際に研修を依頼していただく人事・教育担当者の方のお力添えが必要なのです。

「質の悪い研修」「ダメな研修」にどんどん気付いていただきたいのです。
そうしない限り、「質の悪い研修」「ダメな研修」は残り続けます。

是非、記事を読んでいただき、今後の御社の人材教育に役に立てていただければ幸いです。

今回のチェックポイント
【ダメな研修を淘汰するには、講師と担当者の協力が必要】