【実況中継】ビジネス文書作成研修
第2講:
「良いビジネス文書」の性質1:早く伝える(伝わる)
前回の復習
前回で、「良いビジネス文書の性質」のお話をしました。
良いビジネス文書は、「早く」「正確に」「(読み手を)思いやった」文書でしたね。
今回は1つ目の性質「早く」のお話をします
良いビジネス文書の性質1=「早く」
まずは「早く」について解説します。
さて、何が早いといいのでしょうか?
通常なら「相手の手元に早く届くこと」になるのでしょうが、今回は「良いビジネス文書」の内容に関しての問いです。
「届く」というのはいわば「物流」みたいなことなので、完成した文書をどうしたら相手に早く届くか?ということになります。これは「媒体(紙やメール)の選択」に関することなので、今回のターゲットではありません。(媒体の選択は性質3「思いやる」で解説します)
ビジネス文書の内容に関する「早く」は、以下の2つになります。
1つ目は「(読み手が)早く理解できること=わかりやすい文で構成されている」
2つ目は「(読み手が)早く必要な情報にアクセスできること=探しやすいこと」
この2つをこれから解説します。
チェックポイント1「短文で書く」
1つ目の「早く」というのは、一言で言ってしまえば「簡単、明瞭な文で構成されている」ということです。
そもそも「文」「一文」とはなんでしょうか?
様々な解釈があるでしょうが、ここでは
「先頭から、”。”(句点)までの内容」とします。
「文」が集まって「文章」になり、
「文章」を媒体に書いて「文書」になります。
つまり、「文書」を構成する最小単位の「文」が1つ1つが、誰が読んでも「わかりやすい文」になるようするのです。
では、どしたら「わかりやすい文」になるのでしょうか?
それはなるべく「短文で書く」ということです。
最短の文は主語と述語だけの文
ちなみに、一番短い文とは「主語と述語だけの文」です。
たとえば・・・
「私は研修講師です。」
「私は元SEでした。」
「私は50歳です。」
上の文はいずれも主語(何が)と述語(どうした)のみの文です。わかりやすいですよね。しかも誤解されることもまずないと思います。「私は研修講師です」と言ったのちに「そうですか。芸人なんですね」と言われたことは今までありません(笑)
このように主語と述語で構成した文は、わかりやすく、また誤解なく伝わります。
無意識に書くと、自然に長文になる
しかし、なんでも最小構成で文を作るわけにはいきません。特にビジネスでは「伝えるべき情報」があり、それらを加えることによって情報が揃います。
例えば・・・
私は、15年間SEの経験がある、IT系が得意な講師です。
のように、時間や場所、修飾語など情報を付け加えて、文にします。
しかし、この文を読んで違和感を感じている人もいるのではないでしょうか?
この文なんか「まわりくどい」ですよね。わかりにくい・・・
これ、主語の「私は」と述語の「講師です」の間に様々な情報が入っているからです。
伝えなければならない意識が強くあるために、情報を一つの文に全て入れてしまおうとするとこうなります。
通常、日本語は主語が文の前方、述語が文の後方にきます。必要な情報を一文に入れようとすれば、主語と述語の間に様々な情報が付け加わります。つまり一文に情報を入れれれば入れるほど、主語と述語の間が「離れていく」のです。
実は日本人は文を読むとき、無意識に主語を頭に取り留めながら文を読み進めていきます。述語が最後の方にあるので、文末になって初めて文全体を理解するのです。
なので、主語と述語が離れると、それだけ「主語を頭に取っておく」時間が長くなります。場合によっては、主語がなんだったかを忘れてしまい。何度も読まないと(聞かないと)理解できなくなったりします。長い一文はそれだけ脳に負担をかけるのです。
長文でいっきに伝えるのではなく、短文を重ねて相手に伝える
このように無意識に文を書くと、さまざまな情報を付け加え、結果、長い文なってしまうのです。
しかし、長くなれば長くなるほど、主語と述語が離れて、読むときに脳に負担がかかる文になっていまいます。
だから、伝える情報は長い一文ですべて伝えようとするのではなく、短文を複数使って、1つ1つの文が分かりやすいように構成しましょう。
ちなみに先程の例文を短文で説明すると…
私は講師です。15年間SEの経験があります。よって、IT系が得意です。
となります。
元の一文を3つの文に分けて文章にしました。この方が、理解しやすいですよね。一文で書くのに比べるとトータルの文字数は増えるのですが、それでも短文を複数用いて書いた方が読み手は読みやすいのです。
ちなみに短文とは一文がMAX50字ぐらいです。あくまで目安ですが、先頭から句読点(。)までが50文字以上になったら、「2つに分けれないかな」とチェックしてみてください。
チェックポイント2「題名を付ける」
次は「探しやすい」ことでした。
ビジネス文書は1度読み終わったら終わりではありません。後日、参照されたり、何度も読み込まれたり、様々な人の調査の対象になったりします。
つまり「○○に関する文書はどれだ?」「確か○○に関しては、この文書のどこかに書かれたはずだ?」など、読み手が必要な情報を文書や文書の内容から探す機会が多いのです。
この時、読み手は「自分に必要な情報にすばやくアクセスしたい」「必要な所を特定して読みたい」と思っています。しかし、大量の文書の中から探すのは大変です。
「探しやすい」とは、複数の文書から自分の必要なものをなるべく早く探せるようにするということです。
ではどうすればよいのでしょうか?
それは「題名を付ける」ことです。
他と区別できる題名をつける
しかし、「題名が付いていない文書なんてないでしょう」と笑う方もいるかもしれませんね。
では、作成した文書の題名を見てこう考えてみてください。
「同様の他の文書と区別できるか?」です。
昔、私がプロジェクトリーダーになり、部下や同僚から文書を受けとって思ったのは「同じ題名の文書が多い」ということです。
例えば週次や月次の定例の報告書、単に「報告書」や「月次報告書」という題名のものが実に多かったです。当然、メンバー数や担当者数分提出されるのですが、みんな同じ題名なんてこともありました。
「これは何に関しての報告書なのか?」
「最新の報告書はどれか?」
など、いろいろ考えてしまい。題名から推測できず、結局、全部読んで、やっと今読むべき報告書がわかるという感じでした。
読み手が必要な情報に素早くアクセスできるよう「他の文書と区別できる題名をつける」ことを意識しましょう。