【実況中継】ビジネス文書作成研修
第3講:
「良いビジネス文書」の性質2:正確に書く
何を「正確に」するのか?
次に「正確に」についてお話しします。
当然「正確に」というのはビジネス文書でとても重要なことです。情報に嘘があれば、それだけであなたやあなたの会社の信用を一気に落とします。
しかし、誰も「嘘を書こう」「間違った情報を伝えよう」なんて思わないのですよね!少なくとも仕事上で「不正確な情報」を書こうと思っている人なんていないと思います。
では、なぜ「正確に」がポイントとして挙げられているのでしょうか?
これは「正確に伝わる(理解される)」ことを言っているのです。
そして、正確に伝わらない原因としては、
・「何が」と「どうなのか」のセットになっていない
・「事実」と「思考」が整理できていない
の2つの場合がほとんどです。
これらを防ぐにはどうしたらよいのでしょうか?
チェックポイント3 見出しが付いている
「早く」のところでも解説しましたが、「読み手」は文書中の情報を活用するために、文書から必要な情報を探します。そのために「題名」が重要といいました。
では、題名から自分が必要な文書を特定できたとして、それで「必要な情報にアクセスした」といえるでしょうか?
文書を特定できただけでは、不十分です。
なぜなら、今度はその文書の中からさらに特定の情報を「探す」からです。
これには「見出し」を付けることが有効です。
あなたも新聞や雑誌を読むときに、最初の1ページ目の先頭から、最終ページの最後の一文字まで読みますか?読まないですよね。各ページの「見出し」や文章中の「小見出し」をみて、読む記事を選んでいると思います。それと同じです。
「見出し」をつけることによって、読み手は文書内のどこになにが書いてあるのかを一目で探せるようになるのです。
そして、「見出し」と、それに対応する「内容」がセットになることによって、文でいう「主語」と「述語」が揃ったことになり、
「何が、どうした」が明確になるのです。
「文章のみ」は読み手に「全部読め!」と言っているのと一緒
例えば、あなたが
「この講師(中原)の経歴って何年ぐらいなんだろう」
と思ったとします。
そして、私の自己プロフィールが書かれている文書を見つけたとします。その文書には、以下のような文章が書かれていました。
「私は中原和征と申します。職業は、研修講師をしています。主な登壇内容は文書作成系(ビジネス文書、マニュアル作成)と業務改善系(タイムマネジメント、問題解決)を登壇しています。講師になって14年経ちました。当初は・・・」
この場合、最初から読み進めて「講師になって14年経ちました。」というところまで読んで、やっと「あ、14年間なんだ」と分かることになりますよね。
このように文章に見出しが無い場合、最初から該当箇所まで読み進めなければ、必要な情報を知ることができません。
「見出し」をつけると読む箇所を選べる!
一方、これに見出しをつけたらどうでしょう?
「見出し」をつけることは、「読み手が読む箇所を選べる」ともいえます。
例として上の文章を「何がどうした」の「何が」を見出しに、「どうした」を文で書いてみます。
・氏名
中原和征と申します。
・職業
研修講師をしています。
・経歴年数
14年になりました。
・登壇実績
主に文書作成(ビジネス文書、マニュアル作成)、
業務改善(タイムマネジメント、問題解決)を登壇しています。
これなら、一目で「お、講師経歴という項目があるな、なるほど14年か」となりますね。他の情報を読まなくてもすみます。情報のアクセスが早いことがわかると思います。
箇条書きは「見出し」に番号をつける
ビジネスでは、更に簡潔にするために、「どうした」の部分を単語や数値、体言止めの短文にします。
そして、各見出しに項目番号をつけ、順番と階層を表現します。
「階層」は番号に「”1.2.3.”が最上位」「次は”(1)、(2)”のような括弧付きの番号」のように定義して、「情報の深さ(粒の大きさ)」を表現します。
1.氏 名 中原和征
2.職 業 研修講師
3.講師経歴 約14年間
4.登壇実績
(1)文書作成系
・ビジネス文書
・マニュアル作成
(2)業務改善系
・タイムマネジメント
・問題解決
一見して、情報が簡潔に並んでいることがわかると思います。
チェックポイント4 事実と思考を区別する
さて、先ほどの「私のプロフィール」情報に1つ「顧客評価」という項目を追加したとします。
1.氏 名 中原和征
2.職 業 研修講師
3.講師経歴 約14年間
4.登壇実績
(1)文書作成系
・ビジネス文書
・マニュアル作成
(2)業務改善系
・タイムマネジメント
・問題解決
5.顧客評価 極めて高い
自分で書いておいてなんですが、なんか嫌な感じです(笑)
あなたはこれを見て、どのようにおもわれますか?
「極めて高いって・・・本当に?」
「どうして顧客評価が高いと言えるのですか?」
と聞きたくなりませんか?
その返答が「そう感じるからです」だったらどうでしょうか?
信じられないですよね。
あなたと私はまだ知り合ったばかりですもんね。
つまり、「顧客評価」の項目は「私の思ったことや考えたこと(思考)」に過ぎません。他の情報である「氏名」や「職業」など「客観的にそうであること(事実)」に比べ、信用度は落ちます。
もし、この「顧客評価」をあなたが「アンケート調査結果」のような「事実」であると捉え、私に研修の依頼をすると「あれ?たいしたことない・・・」(笑)となってしまうかもしれませんよね。
このように情報は「事実なのか?思考なのか?」を読み手が区別できるようにまとめる必要があります。
例えば上の見出しの「顧客評価」を「自己アピール」と変えれば、「講師自身の自己評価ね」とわかりますし、もしアンケートなどの事実証拠があるのであれば、「極めて高い」の後に「自社アンケートによる調査結果は平均98点」と文章に付け加えるべきでしょう。
ちなみにビジネス文書ではまず「事実」が重要です。
若手のうちは「まずしっかりと事実を伝えることができる」ようにしてください。
チェックポイント5 情報にモレがない
人は情報を聞いたり、読んだりしたとき、足りない情報を自分で補おうとするそうです。
だから、あなたの文書に「足りない(欠けている)情報」があった場合、読み手は「おそらく〇〇だろう」「言ってこないなら、大丈夫だろう」と勝手に判断してしまうかもしれないということです。
伝えた情報は全て正確なのに、欠けている情報があったために相手が間違って理解してしまったら皮肉ですよね・・・
情報が揃っているかは5w1h(6w3h)でかなりチェックできます。以下の項目を「書き出して」チェックしましょう。
(これが下書きにもなります)
When:いつ
Where:どこで
Who:誰(どの組織)が、誰(どの組織)と
Whom:誰に(どの組織)対して
What:何を
Why:なぜ?(理由・原因)
How:どうやって?(方法・手段)
How much・many:いくら?、どれくらい?(金額、量)
How long:どれくらいの期間?(時間)
情報が無い箇所や当たり前のことは、当然書かなくてよいです。
しかし、上のチェックをすることによって、「うっかり記載することを忘れていた」という「ありがちなミス」を防ぐことができます。
5w1h(6w3h)はフレームワークの基本中の基本です。しかし、講師になって分かったのですが、意外にみんなできていません。自分の頭の中を過信しているのです。特に重要な文書の場合は、しっかりと書き出してから、文書を作成するようにしましょう。